担当講師:佐々木雅幸(大阪市立大学 名誉教授)
【講義概要】
20世紀末の創造都市論登場の世界的な背景を踏まえて、理論的な先駆者であるルイス・マンフォード、ジェイン・ジェイコブズ、ピーター・ホールの紹介と検討を行い、次いで、21世紀の創造都市論登場の担い手であるチャールズ・ランドリーとリチャード・フロリダの所説の紹介と検討を行う。主に、欧米における創造都市論の展開過程をボローニャ、バルセロナ、モントリオールなどで検討したうえで、日本における創造都市の展開を金沢、神戸、京都などにおいて紹介し、その特徴を分析する。
◎7月2日(火) 日本における創造都市の展開(金沢、神戸、京都等)
・講義動画
日本の創造都市は、2001年の金沢創造都市会議や2004年の横浜市の文化芸術都市事業本部から始まり、神戸市、札幌市、京都市とムーブメントが起き、2008年以降、全国にユネスコ創造都市が広がっていった。伝統的街並みと職人工房・伝統芸能といった文化の保存、現代アートによる都市再生から創造都市を標榜した金沢市、行政が主導し「創造都市推進課」をつくり創造都市の施策を推し進めた横浜市、震災10年を機に芸術文化を活かしたまちづくりを目指した神戸市など、各々の都市の特徴的な取組を紹介した。また、創造都市の普及・発展を推進するため、「ユネスコ創造都市ネットワーク」を筆頭に、文化庁が各自治体の主体的な創造都市の取組を支援する「創造都市ネットワーク日本」、日中韓の平和で共生的なネットワーク「東アジア文化都市」などの日本や世界的な組織についての紹介、「越後妻有大地の芸術祭」など現代芸術祭の地域展開の意義についてなどが語られた。都市に限らず、農村における創造都市の取組が広がっていることに触れ、各地域における自然環境の持つ多様性や固有価値を保存などから生まれる地域住民のアイデンティティや都市と農村との連携の重要性についても、示唆があった。
・講義資料