担当講師:吉本光宏(文化コモンズ研究所 代表)

【講義概要】
日本の文化政策について、1980年代からの潮流を振り返り、現状や課題の把握、文化予算からみた諸外国との比較などを行う。
2017年の文化芸術基本法の改正で国の方針としても明確に打ち出された文化芸術と教育や福祉、まちづくり、観光など他分野との有機的な連携について、国内外の実践例を広く紹介し、全国に広がる地域アーツカウンシルの動向も踏まえ、これからの文化政策のあるべき姿、創造都市政策との関連性を考える。

◎10月15日(火)地域政策や地球規模の課題と向き合うアート

・講義動画
「アート×地域創生」の国内の取組として、芸術祭やアーティスト・イン・レジデンスを起点に地域が変わるものがある。瀬戸内の離島群で行われる瀬戸内国際芸術祭は、会場となる島々では観光客の増加のみならず移住が増えている島もある。また、林業が衰退し急激な過疎化、高齢化が進み空き家が増加していた徳島県神山町では、1999年に神山アーティスト・イン・レジデンスをスタート、webサイト「in Kamiyama」の開設により移住ニーズが顕在化、「ワーク・イン・レジデンス」の活用により、空き家になっていた商店街などにIT系のサテライトオフィスや地元食材を使ったレストランなどが集積、地元農産物への波及にも繋がっている。また、全寮制である「神山まるごと高専」の開校による学生200名が転入は、人口5000人の神山町にとって大きなインパクトである。これらを手掛ける「NPO法人グリーンバレー」は、「日本の田舎をステキに変える!」というミッションのもと、理事長の大南さんの言葉でもある「やったらええんちゃうん」というスタンスで、アート、移住定住、環境、働き方などの分野で活動を展開している。その他、信州アーツカウンシルの取組、気候変動など地球規模の社会的課題と向き合うアートの活動としてオラファー・エリアソンの「Littl Sun + Ice Watch」が紹介された。4回の講義を通したまとめとして、文化政策の原点(支援・保護される芸術文化)と経済的・社会的インパクトを視野に入れた文化政策が必要であり、相互に共存・相互発展が求められると語られた。

・講義資料