担当講師:杉崎栄介(公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団)

【講義概要】
文化芸術創造都市横浜の具体的な取組として、アートNPO主導の文化芸術振興、遊休不動産や公共空間の文化芸術利用、地域アーツカウンシルによる中間支援などがあげられる。これらの施策は行政の企画で始まったように見えるが、実はその多くは経済界の過去の実践や提言を参考にしている。歴史的にみても、行政が文化や芸術の担い手として現在のように登場するのは戦後しばらく経ってからのことで、今なお先駆的な取組の多くは経済界が主導している。本ユニットでは、現在進行形で企業などが行う芸術の担い手支援やアートを通じた地域振興、まちづくりの事例を学び、あらためて創造都市について考える。

◎11月8日(金) この世界に、バグを。アーティストのキャリアを全力で応援するアートセンターBUG(花形照美・株式会社リクルートホールディングス 財団・アートセンター推進部部長)

・講義動画

創造の担い手であるアーティストやアートワーカーに対する施策は、「人材育成」という言葉を使いがちであるが、本来は支援する側と対等な関係であり、適切なパートナーシップを築き、彼らのキャリア形成に寄与するプログラムが重要である。この具現化に取組む「BUG」は、2023年9月にリクルートホールディングスが開設した八重洲口のアートセンターである。企業として目指す世界観「Follow Your Heat」や、大切にする価値観「WOW THE WORLD(新しい価値の創造)」などのうち特に「BET ON PASSION(個の尊重)」は、「BUG」のコンセプトでも非常に重視しているものとなる。銀座で30年以上「2つのギャラリー」を運営してきた経験を生かし、アーティストの働き方や環境改善、キャリア形成に繋がるよう、3つの活動方針(①ライフステージへの配慮、②キャリア支援、③適切なパートナーシップ)を公表している。これらは、口約束よる費用の不明確さ、生活費の不足を避けるため、役割分担や契約締結することなど、具体的な内容となっている。開館後、これまでの繋がりを活かし、様々な経験やキャリアを重ねるアーティストの紹介、美術館やギャラリーでは実施しにくい挑戦的な展示、参加型プログラム・作品販売の実践など年間10本の展覧会等を開催している。その他、企画をつくるアートワーカー向けオンラインプログラムの取組も行っている。また、「運営体制」では「受付担当」に美大生を積極的に活用していること、「展覧会企画・運営の仕組み」では「アーティスト報酬の半金前払い」や5項目の「開催基準」、「ゴールとKPIの作成」などについて語られた。

・講義資料(なし)