担当講師:杉崎栄介(公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団)
【講義概要】
文化芸術創造都市横浜の具体的な取組として、アートNPO主導の文化芸術振興、遊休不動産や公共空間の文化芸術利用、地域アーツカウンシルによる中間支援などがあげられる。これらの施策は行政の企画で始まったように見えるが、実はその多くは経済界の過去の実践や提言を参考にしている。歴史的にみても、行政が文化や芸術の担い手として現在のように登場するのは戦後しばらく経ってからのことで、今なお先駆的な取組の多くは経済界が主導している。本ユニットでは、現在進行形で企業などが行う芸術の担い手支援やアートを通じた地域振興、まちづくりの事例を学び、あらためて創造都市について考える。
◎11月1日(金) 北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想の現在地(木坂 葵・一般社団法人おおさか創造千島財団事務局長)
・講義動画
始めに、1979年のセゾングループによる「スタジオ200」に始まり、1980年の水辺の解体前の倉庫を利用しロフト文化を標榜したアートプロジェクト「ヨコハマ・フラッシュ」、1990年の「天保山ハーバーランド」など、2020年までの創造都市の取組について、歴史的な動きを年表で振り返ることで、北加賀谷の取組の動きの時期が明らかにされた。造船業で栄えた北加賀谷は、1979年の造船所撤退により利用されなくなった倉庫や家屋が廃墟として取り残されていた。これらを所有する企業が、廃墟のポテンシャルを生かしクリエイティブな活動による地域再生を目指した取組が「北加賀谷クリエイティブ・ビレッジ(KCV)構想」である。2004年にアートプロデューサーとの出会いにより、欧州ではアートセンターとなっている事例があることを知るとともに、アートイベントを開催したことがきっかけとなり、2005年に造船所跡地をアート施設(クリエイティブセンター大阪)として開設をした。その後、この施設を核に北加賀谷のまち全体に創造的な拠点を広げていくこととなった。2009年に「自由なDIY」「現状回復不要」での古い空き家をアーティスト・クリエイター向けに賃貸を開始、住宅賃貸から、2011年には空き地や大規模物件を創造活動へ転用、自主運営拠点の設立へと展開させた。古い建物を壊さず再生を目指すことで地域が紡いできた歴史を残すこと、50軒ほどの創造的な拠点の入居者とKCV構想や目的を共有し継続なコミュニケーションを行うこと、よりよいまちづくりとなるよう入居者と協働すること等により、エリア一体の活性化につなげることで、アートのまちとしてブランド力が上がってきている。また、協働スタジオ「コーポ北加賀谷」、大型アート作品の収蔵庫「MASK」、森村泰昌のミュージアム「M@M」など、アーティストの支援、地域再生、まちづくりに繋がる多くの事例が紹介された。
・講義資料(なし)