担当講師:野田邦弘(横浜市立大学 客員教授)
【講義概要】
産業構造の転換により都市経済の崩壊に見舞われた欧州工業都市の再生政策として、1980年代頃登場した創造都市政策は、今世紀に入る頃から欧州だけでなく、世界中で取組が一斉に始まります。本講義では、横浜の事例を皮切りに自治体政策の側面から創造都市の神髄とは何か考えます。また日本経済の衰退を創造経済の立場から総括し、創造性が日本再生のカギを握ることを示します(創造性教育の重要性)。また韓国での取組も紹介しながら、東アジア創造都市連携を構想したいと思います。
◎8月2日(金) 国連、EU、文化庁の取組、創造農村論、芸術不動産
・講義動画
「創造都市」とは、どのようにはじまったのか。学問から独自に発展する場合と、現象から学問が立ち上がってくる場合があるが、「創造都市」は後者である。EUにおける地域政策(補助金制度)は2本(共通農業政策・構造政策)あるが、アートフェスティバルから始まった「欧州文化首都」は構造政策である。当初は、各国の首都から始まったが、観光など経済効果もあることがわかり、ほとんどが日本では知られていない小さな都市へと広がった。都市部への文化等の機能集中を解決することを目的とし元監獄の施設を利用したアトリエ設置をはじめ多くの市民が参加するイベントを行っているオランダのレーワルデン市、廃業した工場施設の不法占拠から始まったアトリエやアーティストインレジデンスを後追いで市が合法化し多くのアーティストを育てたニューヨークのSoHoなどの事例が紹介された。創造都市論の系譜として、フランスのナント島や中国の創意産業園区、ユネスコ創造都市ネットワーク、東アジア文化都市に加え、創造都市ネットワーク日本(CCNJ)についても語られた。横浜の取組として、2007年にアーツコミッション・ヨコハマ((公財)横浜市芸術文化振興財団)が組織され、アーティスト・クリエーターの事務所等開設支援助成や、芸術不動産リノベーション助成により、関内・関外地区にこれらの事務所が集積したことにも触れた。また、「創造農村」の事例として、鳥取県の旧明倫小学校や駅前の病院(ホスピテイル)の保存活用や、瀬戸内芸術祭などについても語られた。
・講義資料