担当講師:杉崎栄介(公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団)

【講義概要】
文化芸術創造都市横浜の具体的な取組として、アートNPO主導の文化芸術振興、遊休不動産や公共空間の文化芸術利用、地域アーツカウンシルによる中間支援などがあげられる。これらの施策は行政の企画で始まったように見えるが、実はその多くは経済界の過去の実践や提言を参考にしている。歴史的にみても、行政が文化や芸術の担い手として現在のように登場するのは戦後しばらく経ってからのことで、今なお先駆的な取組の多くは経済界が主導している。本ユニットでは、現在進行形で企業などが行う芸術の担い手支援やアートを通じた地域振興、まちづくりの事例を学び、あらためて創造都市について考える。

◎10月25日(金) 本ユニット趣旨説明+全国の企業メセナ事例紹介(若林朋子・立教大学大学院 社会デザイン研究科 特任教授)

・講義動画

横浜の創造都市施策の始まりをどのように捉えるのか。アーバンデザイナーの北沢猛氏が「本来都市は人間の夢を育む場所であったのに、いまはそれを失わせる方向になっている。」との危機感から、長期に保存再生される、投資すべき社会基盤として都市の再構成が必要で、文化や歴史、自然環境の正当な評価が都市に必要な人間性や創造性を育むと語っている。これは「地域、その都市ならではの文化再生の結果として次の都市の姿を市民主導で構想していく」ことであり、自律性・多様性・実験性によって内発性が高まり「成長」ではなく「成熟」社会時代における施策、文化芸術創造都市横浜となると考える。アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)」は、文化芸術を介した連携、協働、共創をマネジメント(中間支援)するものであり、多様な業種の参加者が当事者となり、さらに仲間を増やしていく(パートナーシップ)ことで、伝統工芸の復興、移住促進、経済活性化などに繋がっていく。このような取組は、企業メセナ(民間の芸術・文化支援)の方が先駆けて行っている。日本は、江戸時代の近江商人をはじめ昔から民間が主体的に芸術・文化を支援してきた歴史がある。企業メセナ協議会は1990年に設立し、メセナ運動・啓発活動が始まったが、設立10年を期に「パトロンからパートナーへ」とした提言を掲げ活動を続けている。地元企業の事業継続には、地域活性化に対する切実な動機がある。パシフィックミュージックフェスティバル札幌(若手音楽家の育成)、聴覚障害者も楽しめる「身体で聴こう音楽会」、複数の企業が共同支援をした「エイブル・アートフェスティバル」、ポーラ伝統文化振興財団(伝統工芸・伝統芸能・民族芸能の継承支援)などの企業メセナの事例が紹介された。

・講義資料なし